ヘルメスの姿と神としての特質
美青年の姿と魅惑的な装備
ヘルメスは、その美しい容姿で知られる神です。彼は、 女性を魅了する美青年の姿 をしており、頭には 翼のある帽子ペタソス をかぶり、足には空を飛ぶことができる 黄金のサンダル「タラリア」 を履いています。また、手には神々の 伝令の証である杖「ケリュケイオン」 や、武器でもある「ハルパー」を持っています。
古くから多様な役割を担う神
ヘルメスは、ギリシャ神話において 非常に古くから存在する神 の一人であり、長い歴史の中で様々な役割を担ってきました。彼は、 ゼウスの使者 としての活躍が有名ですが、それ以外にも 富と幸運の神 、商業、発明、泥棒、旅人などの 守護神 でもあります。
ローマ神話の水銀の神との結びつき
ヘルメスは、ローマ神話における 「メルクリウス」(マーキュリー)と同一視される 神です。「メルクリウス」という名前は、 「水銀」を意味 しており、この金属の特性である 「捉えようとしてもすぐに逃げてしまうすばしっこさ」 から付けられたと言われています。
抜群の知恵と口八丁手八丁の技術
ヘルメスの最大の特徴は、 誰よりも知恵が働き、口がうまいこと です。彼は、 必要とあらば山や海をも超える身軽さ を持ち、時に緻密に、時に大胆に行動します。また、他の神々が隠そうとすることを平気で話し、 すました顔で厚かましい嘘をつく ことができる、抜群の口八丁手八丁の技術を持っています。
悪知恵を働かせる泥棒の守護者
ヘルメスは、その ずる賢さと悪知恵から、泥棒の守護神 ともされています。これは、彼が 商人の守護神 であることに由来しています。古代において商人は旅をしながら物を運ぶ存在であり、 情報を集めて人々に伝える役割 も担っていました。このような商人の特性が、 泥棒のイメージと結びついた のです。
トリックスターの神、ヘルメス誕生
ゼウスの綿密な計画
ヘルメスの誕生は、 最高神ゼウスの綿密な計画 によって実現しました。ゼウスは、 オリンポス神族の年長役となる神 が必要だと考え、自らの 正妻ヘラが眠っている隙に 、こっそりと寝室を抜け出し、 アルカディア地方の山奥にある洞窟 へと向かいました。
洞窟に住まうマイアとの秘めた交わり
ゼウスが向かった先には、 アトラスの娘であるプレアデスの7人姉妹の1人、マイア が住んでいました。マイアは 大変美しく、頭の切れる女神 であり、ゼウスにとって 伝令の神を産ませるのにふさわしい女性 でした。ゼウスは、マイアと 密かに交わり 、嘘つきで泥棒の才能を持つ子が生まれるよう計らったのです。
生まれながらの天才児
マイアは、ゼウスの計画通りに あらゆる天才的才能を持つ神、ヘルメスを誕生 させました。ヘルメスは、 生まれるとすぐにゆりかごから抜け出し 、周囲を警戒しながら洞窟の外へと出ていきました。彼は、 非常に頭の回転が速く、抜け目のない、盗みが大好きな大ウソつき であり、ゼウスが待ち望んでいた通りの トリックスターの神 だったのです。
赤子ヘルメスの驚くべき功績
亀の甲羅が生んだ美しい旋律
生まれたばかりのヘルメスは、 洞窟の外で亀を見つけ、その甲羅から竪琴を作りました 。彼は、 甲羅から肉をえぐり出し、羊の腸を張って7弦の竪琴を作り上げた のです。この竪琴を使って、ヘルメスは 美しい音色を奏で、母マイアとゼウスの愛の物語を歌い上げました 。
アポロンの牛を盗む大胆な行為
ヘルメスは、生まれてすぐに 兄であるアポロンの牛を盗むという大胆な行為に出ました 。彼は、 50頭もの牛を盗み、巧妙な手口で足跡を隠しました 。牛を後ろ向きに歩かせ、自分も 枝で編んだ不思議な履物を履いて足跡を誤魔化した のです。そして、 盗んだ牛を隠し、その中の2頭を殺して神々への供物としました 。
人類に火をもたらす発明
牛を料理しようとしたヘルメスは、 火を探しましたが見つからなかった ため、 月桂樹の枝を板の上で高速回転させて火を起こす方法を発明しました 。この 木をこすり合わせて火を起こす方法は、現代でも知られている ものです。ヘルメスは、この発明によって 人類に火をもたらした功績者の一人となった のです。
太陽神との知恵比べと友情の芽生え
牛泥棒を追及するアポロン
アポロンは、 自分の牛が盗まれたことに気づき、真相を知る予言の力を使ってヘルメスを追及します 。怒り狂ったアポロンは、 ヘルメスに牛を返すよう迫りますが、ヘルメスは巧みに嘘をつき続けました 。
最高神の前で披露する名演技
ヘルメスは、 オリンポスの神々が集まる場でも、赤子のふりをして見事な演技を披露 します。彼は、 無邪気な顔で自分は盗みを働くような子ではないと訴え 、父ゼウスをも納得させてしまいました。
竪琴と牛の興味深き交換
追い詰められたヘルメスは、 自ら作った竪琴の美しい音色で、アポロンの心を和ませます 。アポロンは、 ヘルメスの才能を認め、竪琴と引き換えに盗まれた牛を譲ることに同意 しました。こうして、ヘルメスは音楽をアポロンに、 牧畜の仕事を自分の役割とする取引を成立 させたのです。
永遠の誓いを立てる神聖な泉
しかし、アポロンはヘルメスの悪知恵を恐れ、 再び自分の持ち物が盗まれることを危惧しました 。そこでヘルメスは、 冥界の神聖な泉「スティクス」に誓いを立てる ことで、二度とアポロンのものに手を出さないと 永遠の約束を交わした のです。
絆を深める魔法の杖の贈り物
アポロンは、ヘルメスの誠意に感謝し、 黄金でできた魔法の杖「ケーリュケイオン」をヘルメスに贈りました 。この杖は、 天界と冥界を自由に行き来できる力を持ち、眠りを司る ものでした。こうして、二人の神は 固い友情で結ばれることとなった のです。
オリンポスを飛び回る伝令神
旅人と商人を導く守護神
ヘルメスは、 旅人と商人の守護神 としての役割を担っています。彼は、 道に迷った旅人を導き、商売の成功を助ける 存在として知られています。また、ヘルメスは 道路の交差点に祀られることが多く、道しるべの神 としても信仰されていました。
魂を冥府へと誘う案内人
伝令神としてのヘルメスの重要な役割の一つに、 死者の魂を冥府へと導くこと があります。彼は、 カドゥケウスと呼ばれる杖を持ち、亡くなった人々の魂を冥界へと案内する ことで知られています。この役割は、 死者の守護神としてのヘルメスの姿を表しています 。
母性溢れるヘラとの絆
ヘルメスは、 ゼウスの正妻であるヘラともよい関係を築いています 。ある時、ヘルメスは ヘラの寝室に忍び込み、彼女の母乳を盗み飲みました 。これを知ったヘラは、最初は驚きましたが、 すぐにヘルメスを我が子のように可愛がるようになった のです。
巨人族との戦いで発揮する才知
ヘルメスは、 ゼウスが巨人族との戦いで窮地に陥った時、その知恵と機転を発揮して窮地を救いました 。彼は、 巧みに敵を欺き、ゼウスの勝利に貢献した のです。この出来事は、ヘルメスの 知略と戦略の神としての一面を示しています 。
人類に寄り添う慈愛の心
ヘルメスは、 人間に対して深い愛情を持っている神 の一人です。彼は、 プロメテウスと同様に、人類に火をもたらしたり、様々な知識を与えたりした とされています。また、ヘルメスは 困難に直面した英雄たちを助け、導く役割 も果たしてきました。
既成概念を覆す革新的な神
自由奔放な発想と行動力
ヘルメスは、 従来の神々の概念を覆す、自由奔放な発想と行動力を持っています 。彼は、 常識にとらわれない思考と、それを実行に移す勇気 を備えた神です。ヘルメスの革新的な考え方は、 新たな発明や発見をもたらし、世界を変革する原動力 となってきました。
神々と人間の心を掴む魅力
ヘルメスは、 神々と人間の両方から愛される、稀有な存在 です。彼の 機知に富んだ言動と、誰とでも分け隔てなく接する姿勢 は、多くの者の心を掴んできました。ヘルメスの魅力は、 垣根を越えて人々を惹きつけ、結びつける力 を持っているのです。